2010年 06月 03日
消えてしまった鎮守の森 vol.04 |
森とは木が集まっただけのものではない。高木低木、下草、野鳥、昆虫、地中の小動物群、カビ、バクテリアなど、いろいろな生き物がいがみあいながらも一生懸命生きている共同体社会である。
日本列島では二千年ほど前に稲作が始まり、森を切り開いて水田とし、さらに道や集落を作ってきた。しかし、私たちの祖先はその際にも、かならずふるさとの木による森を残した。それが鎮守の森である。
鎮守とはその地の地霊を和め,その地を守護する神である。その言葉通り鎮守の森は地震、台風、火事から住民を守ってきた。さらに神社を守ることによって文化を伝えてきた。
鎮守の森は強い。荒れ地には一気にはびこるセイタカアワダチソウなどの帰化植物も鎮守の森には侵入できない。かつては日本中の樹木を食い荒らすと恐れられていたアメリカシロヒトリも鎮守の森には歯が立たなかった。
またスギやヒノキなどを人工的に植えた森では、下草刈り、枝打ち,間伐と常時人間が手を入れてやらねばならないが、その土地本来の樹木でできた鎮守の森は、そんな必要はない。鎮守の森は千年の森なのである。
宮脇昭(横浜国立大学環境科学研究センター教授)
by sanvongi
| 2010-06-03 11:47
| 巨樹巨木